まほろば通信Gallery

千萬(ちよろづ)の軍(いくさ)なりとも言擧(ことあげ)せず取りて來(き)ぬべき男(をのこ)とぞ思ふ 高橋(たかはしの)蟲麻呂(むしまろ) ますらをの弓末(ゆずゑ)振り起し射(い)つる矢を後(のち)見む人は語りつぐがね 笠(かさの)金村(かなむら) ちはやぶる神の御坂(みさか)に幣(ぬさ)奉(まつ)り齋(いは)ふいのちは母父(おもちち)がため 神人部(かむひとべの)子忍男(こおしを)
我が軍(いくさ)の勝利を告げる鬨の声が上がった利 傷付きながらも素朴に喜ぶ兵たちに 私の迷いは見せられない ただ勝つことのみが 彼らを無事に連れ帰る唯一の方法 父母が待つ その故郷への道程(みち)
鬨の声
多くの命が流した血の色に 暮れ方の空が染まる その心の痛みの色を映して

私のイメージの中のタケルはいつも悩んでいます。あるいはいつも迷っています。

自分の立場が多くの兵士たちの生命を左右するものだという責任感もあるだろうし、

任務を果たさなければ帰れない、他に進める自分の生き方もないだろうという自覚もあるし。

でも本当はかなり辛いんだろうな、と思えます。

とてもじゃないけれど、好んで人の命を奪えるような性格でもないですし。

こういうことを本当は望んでいるわけじゃない。けれども他には術がない、という悩みの中で

さらなる良き道を探していくのは非常に難しいものなんでしょうし…。

 

こういうふうな悩み方と迷い方をするのは私も似たようなもので、

自分を見ているような感じがして、そこが一番共感を抱く部分でもあります。

だから悩まないタケルって私にはあまり魅力がないんですよね。

どういう時代でも迷って悩んで、それでも精一杯に前を向こうとする永遠の少年、

あるいは青年の像に私は子供の時からずっと心を惹かれているのでした。

 

上に記した古歌は昭和の時代、ちょうど戦争中に編纂された

「愛国百人一首」の中にも取り上げられている歌でもあります。

戦意高揚のために利用されたというか、そういう時代背景だったんでしょうね。

基本的に戦争の絶えない世の中というのは哀しさの極みでもあります。

人類の業とでも言いますか。古代を見つめていても

現代にとても近い時代がだぶって見えてしまいます。

吉井巌さんのヤマトタケル像に最も惹かれるのも、それと同じ理由なんだろうな、と思います。

 

 

 

 

 

 

背景の大きな樹木のシルエットは以前に使ったものの再利用なんですが、

もともとはフリー素材の写真からせっせと抽出作業をしたものです。

日常はほとんどフォトレタッチには使わないPhotoshopではありますが、

たまにはこういう使い方でCGに転用も可能なんですよね。

遊びごころは尽きませんね(^^;)

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