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熱 視 線

風聞というのは意外な速さで伝わるものらしい。

 

畿内からさほど離れていないとはいえ、その邑に辿り着いた時には想像もしていなかったほどの好意ある歓迎を受けた。長の言葉では西征から戻ったヤマトの王子は「勇者」として讃えられているとのことだった。「勇者?」思い掛けない評価にタケルは愁眉を顰める。自分のなしたことが褒め称えられることだとは到底思えないからだ。

 

そういう本人の想いとは別に歓迎の宴の準備は着々と進んでいるようだったが。

 

 

 

 

館の内で邑の長老達の立て続けの問いに曖昧に答えることにも疲れて、タケルは一人で庭に出た。そのままぶらぶらと邑の内を巡っているうちに、彼は自分に向けられる無数の視線に気付いた。

嫌悪や殺意などの類いではない。不思議なほどの熱を帯びた視線の数々。

 

まといつく視線を逆に辿ると、それは邑の女達の眼差しにぶつかった。若い女もいれば、年配の女もいる。彼女達は嬉しげに頬を上気させて、囁きを交わし妙に華やいだ雰囲気を醸し出している。その女達の視線がタケルを落ち着かない気分にさせる。

 

タケルは知らなかった。噂が彩りを帯びて、彼の到着よりも先に女達の気分を高揚させていたことには。勇者だとの評価の他に、一見はそれと結びつかない優しげな美貌がより彼女達を熱狂させていた。

 

 

 

 

 

熱のある視線に負けそうな気分になって、館に引き返そうとした時だった。

「こんなところで何をしている?」

これもまたふらりとタケルを探しに来た弟彦が問いかけた。

 

察しのいい弟彦は瞬時にまわりの状況を見て取った。弟彦がタケルのそばに近づくと、女達のざわめきがさらに高くなる。いかにも絵になる二人組。

 

あたりをちらりと見た弟彦は軽く笑いながら、

「笑ってやればいいのに」

と言う。

「え…?」

どういう意味なのか、とタケルがいささか戸惑っていると

「相変わらずこういうことには鈍い奴だなあ」

とため息をつきながら、弟彦はタケルの肩に手を置いて彼を引き寄せようとした。

 

熱視線

直ちに挙がる嬌声。

やはりタケルにはその意味がわからない。

「女ってこういうの好きだよな(笑)」

「?」

ただ首をかしげてきょとんとしているタケルを瞬間抱き締める。

悲鳴に近いような女達の歓声。

 

 

「眼福というやつよね♪」

弟彦はすぐにタケルを解放したが、女達の歓声はなかなかやまなかった。

口に手を当てて笑いを噛み殺している弟彦のそばで、やはりタケルは呆気に取られている。

「?」

 

…おそらくこの後でこのあたりの女性陣の噂には脚色がつくに違いない。

「これもサービスというやつさ」

…なにげに「こいつは俺のだ」って主張してないかい?

突発的にこういうシーンが描きたくなってしまいました。

どのみち落描きのつもりなんですが、なりゆきできちんと色も塗ってしまったり…。

娯楽が乏しい古代において、スターみたいにミーハー出来る

存在なんじゃないかなあ…と想像してしまって(笑)

タケルは鈍いです。本当に色恋沙汰というか、

そういうことには致命的に鈍いんですよね〜。恋人とかの特別な女性以外には、

どう対応していいのかよくわかってないんじゃないでしょうか。

それでいて外から自分がどういう風に見られたり

思われたりしているのかもよくわかっていませんね。

あんまり自分に自信が持てない性格なんだと思いますけど。

 

私もたまに遊んでみたくなるようです。

オチもなんにもなかったりしますけど…(汗)…すいません…\(;゚∇゚)/

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