まほろば通信Gallery

11 誓約

 

 

その夜、小碓の館で七掬と小碓は再び対峙していた。

小碓にはわからなかった。七掬が自分の味方をしてくれた理由が。それを問うと、七掬は語り始めた。

「王子の母ぎみに託されました、吾子を頼む、と」

 

 

稲日媛にはあるいは予感があったのかもしれない。この度の出産で自分の命が尽きることの。ただひとつの気掛かりは不吉な運命を背負って生まれてくる子供のことだった。播磨の生家にいた時から、兄のように親しんできた七掬に密かに願いを託した。

 

 

「倭媛さまも同じ思いでいらした。それゆえにあの方は美濃の地にあなたを託す地を見つけ、そこへあなたをお連れしたのも私です」

 

 

 

七掬はさらに稲日媛と自分が出逢ったいきさつを明かし、孤児の自分のために命を賭けてくれた稲日媛に、生涯尽くすと決めたことも話した。媛が息災であったならば、そのまま大和においても大王の忠臣として過ごしたはずだった。思いがけない小碓の帰還が七掬の運命を変えた。

それまでの彼はただ大碓のみを見守っていればよかった。しかし、かつての媛と瓜二つの小碓を見た時に、七掬は自分の将来を賭けてみようと思った。宿命に流され、消えてゆくだけの命であればそれも仕方がないと思う。それゆえに敢えて厳しく指導もした。そして小碓の中にある燃えるような芯の強さを確認したさきほどに、七掬の心は決まったのだ。かつての媛のように気高いものを見つけた、と思った。

 

魂極る 誓約

いつしか七掬は小碓の前に跪いていた。

「これより後、命ある限り、あなたを主(あるじ)としてお仕えします」

 

 

小碓は信じられない、というように眼を見張っていた。やはりかつての媛に面影がそのまま重なる。

「もっとも、足往には負けました。あいつは初めて逢った時から、あなたを真の主と見抜いていたようです」

七掬は笑った。それは小碓が初めて眼にした七掬の笑顔だった。

やれやれ、どうにかこうにかラストまで辿り着きました。まさかこんなに長くなるとは…(汗)やはり小説にまでは至らない、中途半端な書き込みですね。すみません。気力があったら、もっとじっくりと書き直してみたい思いもありますが、この続きもそれなりに書きたいですしね。

立場的に弟彦のライバルが現われてしまいました(笑)これで弟彦が大和にやってきたらどういうことになるのやら…。

 

今回は弟彦が出て来ない、とう不満の現れか、誉津別の顔が弟彦に酷似してしまいました(汗)特に険しい表情のはね(汗)しまったなあ、と思いつつ、描き直す気力もやはりありませんでした。どうもこのタイプの顔は私の好みらしいです(笑)あと、両道入媛の顔も倭媛のイメージにつられてかなり大人っぽくなってしまいました。まあ、彼女は倭媛とはさほど年齢差がないものと思われます。出来れば登場人物全員の顔が描ければさらによかったのでしょうが、やはり気力と体力の限界でした。なにはともあれ、キャラクターの息吹を少しでも感じていただけたならば、私には本望です。ご精読ありがとうございました。

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