尚壽館での稽古から帰って、今は自宅の自分の部屋でくつろいでいる佑介。
「…ったく、航のヤツ。来週は覚えとけよ;;」
尚壽館での稽古後。剣友で親友でもある千葉 航に「洗いざらい白状するまで帰さない」と言われてとっつかまり、栞との……を告白するはめになってしまった。
航にも一つ年下の恋人がおり、だがその相手が大物政治家の孫娘ということもあって色々な葛藤があることを感じ取り、佑介は腹をくくって話したのだ……が。
それを途中から、師匠である真穂からの伝言を伝えに来た栞に聞かれていたようで、それに気づいた航に「聞き逃げ」されてしまったわけだ(笑)。
(…しかし紘次さんといい、航といい、なんでわかってしまうんだろう;;)
そう思い、机に伏した。
それが自分の表情と、その内から漂っているもののせいだということは、佑介は気づいていない。
元々精悍でかなり整っている顔は、あの日から更に大人びて『男』の表情になり、ちょっとした仕種にもそこはかとない『色気』を感じさせるのだから。
その時、窓のほうからこつこつ、と音がした。
「……?」
なんだろう、と思って窓を見れば、見覚えのある赤い小鳥の姿。
「……え、朱夏!?」
それは、佑介が天界より呼び出し、知り合いの少女・杏珠に与えた朱雀の化身・朱夏だった。
佑介は目を見開き、窓を開けて朱夏を中に入れてやる。
「どうしたんだよ。杏珠ちゃんになにかあったのか?」
ありえないとは思うが、佑介はひとまず聞いてみる。
———なにかあったのは佑介のほうでしょ?
「へ?」
すかさず返事を返した朱夏に、佑介はきょとんとした。
「…いや、今のとこは危険なことはないけど……」
———んもう、そーじゃなくて! とーってもいいことがあったでしょ、一生忘れられないような♪ おめでとう♪
「!////;;」
朱夏が人間の姿ならば、にんまりと笑って言っているであろう声色。
佑介の顔に朱が走った。
「な、なんで朱夏がそのこと……;; ! ハク!?;;」
「違います、私じゃないですよ;; いくらなんでもそんな…(^^;)」
佑介が自分の足許にいた白猫のハクを見ると、慌てたように言う。
———ハクじゃないわよ(笑)。ロンから聞いたの
「え、ロンから?;;」
更にどうして、という表情になる佑介。
ハクが、ふと思い出したように。
「言われてみれば、佑介さまのお誕生日にロンが来てましたね;; 龍どのからのプレゼントだとか言って」
「なーんでそれを早く言わないんだよっっっ!!;;;」
……ということは、自分にとっては親友でもある、東都学院高校の高野 龍やその友人の伏見 馨にも知られてしまっているのではないのか(大爆)。
———ま、いいじゃない。あたしもお赤飯持ってったほうがいいかなとか言ってたんだけどね。杏珠は今イチ、何のことかわかってなかったけど(笑)
佑介の肩の上で、朱夏はそんなことを暢気に言っている。
「10歳の女の子に、そういうことを教えんでもいい;;」
「………(^^;)」
佑介と朱夏の会話を、ハクは苦笑混じりで聞いていた。
———とにかく、お祝いを言いたかっただけなの。……でも、そうなったってことは彼女の将来にも責任を持ったも同じなんだからね。しっかり護ってやりなさいよ
「ああ、もちろん」
はっきりと、そう答える佑介。
揺るぎのない、強い意思がこもった瞳。
それを見た朱夏は。
———あ〜あ、言うだけ野暮だったわね。あっつい、あっつい(笑)
「……しゅ〜かあ〜〜/////;;;」
からかい混じりで言う朱夏を、佑介は赤くなってジト目で見ていた。
「って、火の精であるおまえがそう言うのも変だろう(^^;)」
ハクも突っ込む。
厳密にいえば、ハクは四神ではなく「十二神将」の白虎ではあるが、一般的に四神の白虎は「風」、青龍は「水」、朱雀は「火」、そして玄武は「地」を司ると言われている。
———だって、普通の火じゃないもの。恋の炎ほど熱いものはないのよ♪
何を今更、という風に、朱夏は楽しそうに言った。
「あのなあ……;;;」
佑介はもはや、言い返す気力もない(爆)。
そんな佑介を苦笑気味に見ながら。
———ま、どやされる前に帰るとするわ(笑)。……また来るから
「ああ、気をつけて帰れよ。杏珠ちゃんにもよろしくな」
そう言う佑介の頭上を、朱夏は返事するようにくるくると回った後、窓から飛び立っていった。
その姿が見えなくなるまで、佑介は見送っていた。
…それにしても。
今回のことは、多面的に知られてしまっているのではないか…と、はあっと大きく溜息をつく佑介で
あった。
栞ちゃんと公認の恋人同士になってから、初めて結ばれた今年のバースディ。
ごく私的なその事実がなぜかかなーり多くの人数に知られてしまっている経緯(^^;)
それにはそれぞれの守護神の存在も無関係ではなかったのでした…。
…と、いうことで佑介くんのバースディ後日談。
書いてくださったのはこしろさんですが、なんだかもうキャラが独立して勝手に
動いている印象はますます強く…(^^;)
まあ、朱夏ちゃんは高校生の弟みたいな子が
いっぱいいるように思ってるんでしょうか。
世話も焼きたいけど、ちょっと冷やかしたい。
これも愛情の裏返しっていうか、そういう感じですよね〜(^^;)
「佑介さんがもしも結婚するんなら、お嫁さんはあのお姉さんしかいないよね。
(栞ちゃんのことを言っている)綺麗に重なってるし…。
あのね、ふたりのまわりの空気みたいな
ぼんやりした綺麗な光が重なってるの(^.^)」
いろいろな影響を受けて、いつのまにかオーラのようなものが見えるように
なったらしい杏珠なのでした(^^;)
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